疾患名から探す
最終更新日:2025.3.7呼吸がつらい?間質性肺炎の症状と最新治療法を解説
「間質性肺炎」とは、肺の中の「間質(かんしつ)」という部分に炎症が起こる病気の総称です。一般的に「肺炎」と聞くと風邪が悪化して発症するような病気を思い浮かべますが、間質性肺炎はそれとはまったく異なります。この病気では、肺の壁が徐々に硬くなり、その結果、肺が酸素をうまく取り込めなくなります。そのため、咳や息切れなどの症状が現れるのが特徴です。
進行すると呼吸困難や慢性的な咳など、生活に大きな支障をきたすことがあります。
しかし、早期に症状を認識し、適切な治療を受けることで、病気の進行を遅らせたり、生活の質を保つことが可能です。咳や呼吸困難などの症状がある時や、検査などで肺に異常が見つかった時には放置せず、早期に詳しい検査を受けるようにしましょう。
1. 間質性肺炎とは?

私たちの肺は、小さな「肺胞」という袋がたくさん集まってできています。間質性肺炎は、肺の間質部分(肺胞を支える組織)に炎症が起こることで、肺の正常な構造が壊れ、硬化していく病気です。間質性肺炎の原因には、自己免疫疾患、アスベストや有害物質への曝露、特定の薬剤の副作用、遺伝的な要因などが考えられますが、明確に特定されていないことが多く、予防方法や治療法が限られています。このように原因が特定できない間質性肺炎は、「特発性間質性肺炎(IIPs)」と呼ばれ、国の難病指定を受けています。特発性間質性肺炎は、喫煙歴がある人や高齢者に多く見られ、症状が徐々に進行していきます。
間質性肺炎は、肺が酸素を効率よく取り込む能力を低下させるため、呼吸器系の健康に深刻な影響を与えます。適切な管理がなされなければ、最終的には呼吸不全に至ることもあります。
2. 間質性肺炎の症状
間質性肺炎は、初期段階では症状が軽いため、風邪や喘息などと間違えられることがあります。症状が進行すると、呼吸困難や慢性的な咳が特徴的になり、生活に支障をきたすことが増えます。以下に、代表的な症状を詳しく説明します。
乾いた咳(空咳)
間質性肺炎で最もよく見られる症状の一つは、乾いた咳です。痰が絡まない、コンコンと乾いた咳が持続的に出ます。風邪やインフルエンザのような一時的な咳ではなく、長期間続くのが特徴です。薬を使っても改善しないことが多く、他の呼吸器疾患とは異なる点です。最初は軽度ですが、病気が進行するにつれて、咳はより頻繁に、そして強くなることがあります。
労作時の息切れ(呼吸困難)
息切れは、間質性肺炎の進行に伴って現れる症状です。軽い運動をしているときや階段を登ったときなどに息が上がり、日常生活に支障をきたすことがあります。特に進行すると、安静時にも呼吸が苦しく感じることがあります。病気が進行する前に息切れに気づくことが、早期発見のカギとなります。
疲労感や体力の低下
間質性肺炎にかかると、肺が十分に機能しないため、体内に酸素が不足し、日常生活で疲れやすくなります。軽作業をしてもすぐに疲れを感じ、長時間の活動が難しくなります。進行が早い場合、歩行すら困難になることもあります。
体重減少や食欲不振
間質性肺炎が進行するにつれて、患者さんは食欲が低下し、体重が減少することがあります。
この症状は、病気が身体全体に影響を及ぼしていることを示唆しており、肺機能の低下とともに生活の質も大きく低下します。
胸部の不快感
肺の間質部分が炎症を起こし、硬化が進むと、胸部に不快感や痛みを感じることがあります。この痛みは深呼吸や咳をすることで悪化することがあり、進行した場合には呼吸が非常に困難になります。
3. 間質性肺炎の診断方法
間質性肺炎はその症状が他の病気と似ているため、早期に診断することが難しいことがあります。しかし、専門的な検査を受けることで、正確に診断を行い、適切な治療を受けることができます。主な診断方法は以下の通りです。
胸部X線およびCTスキャン
最も一般的な診断法は胸部X線です。間質性肺炎では、肺に異常な影や影響が現れることがあります。しかし、X線だけでは詳細に状況を把握することは難しいため、CTスキャンが行われることが多いです。CTスキャンでは、肺の細かな異常を確認することができます。特に間質性肺炎の特徴である「蜂巣肺」という状態を見つけることができます。
肺機能検査
肺機能検査では、肺の容量や換気能力を測定します。肺が硬化していくことで、肺活量や呼吸機能が低下します。肺機能検査を通じて、呼吸器の状態を詳細に調べることができ、病気の進行具合を把握することができます。
血液検査
血液検査では、炎症の程度を測ることができます。間質性肺炎に関連する自己免疫疾患や他の疾患の有無を確認するためにも、血液検査は重要です。
生検(組織検査)
診断が確定しにくい場合には、肺の一部を採取して検査することがあります。これを「生検」と呼び、組織を詳しく調べることで、病気の種類や炎症の程度を確認することができます。
4. 最新の治療法
間質性肺炎には根本的な治療法はないものの、病気の進行を遅らせるための治療方法がいくつかあります。最新の治療法について詳しく見ていきましょう。
薬物療法
- 抗線維化薬
間質性肺炎(特に特発性間質性肺炎)の進行を遅らせるためには、抗線維化薬が使用されます。ピルフェニドンやニンテダニブが代表的な薬で、これらは肺の線維化を防ぐ効果があります。抗線維化薬は、病気が進行しないようにするため、治療の中心的な役割を果たします。 - 免疫抑制薬
間質性肺炎が免疫系の異常によって引き起こされている場合、免疫抑制薬が使われることがあります。ステロイドや他の免疫抑制剤が処方されることがあり、過剰な免疫反応を抑えることで炎症を和らげます。
在宅酸素療法
進行した間質性肺炎では、呼吸困難を緩和するために酸素療法が必要になります。酸素療法は、自宅でも使用できる酸素機器を通じて酸素を補うもので、呼吸を楽にし、体力の低下を防ぐのに役立ちます。
肺移植
最も進行した場合や薬物治療では改善しない場合、肺移植が検討されることもあります。
肺移植は、進行性の間質性肺炎に対して最後の治療法となることがありますが、
移植にはリスクが伴うため、慎重に判断する必要があります。
呼吸リハビリテーション
呼吸リハビリテーションでは、患者さんが適切な呼吸法や運動を行うことで肺機能を保ち、
体力を向上させます。日常生活の中で息切れを緩和し、生活の質を向上させる効果があります。
5. 予防と生活習慣
間質性肺炎を予防するためには、健康的な生活習慣が重要です。以下のポイントを心掛けることで、間質性肺炎のリスクを減らすことができます。
禁煙
喫煙は間質性肺炎のリスクを大きく高めます。禁煙することで、肺の健康を守り、病気の予防に繋がります。
有害物質からの防護
アスベストや化学物質への曝露を避けることも大切です。特に職場で有害物質に触れる機会が多い場合は、適切な防護措置を取ることが必要です。
健康診断
定期的に健康診断を受け、肺の状態をチェックすることで、早期に異常を発見し、適切な治療を受けることができます。
運動とバランスの取れた食事
肺を健康に保つためには、適度な運動とバランスの取れた食事が重要です。適切な栄養を摂り、体力を維持することで、病気の進行を遅らせることができます。
6. まとめ
間質性肺炎は進行性の病気ですが、早期に発見し、適切な治療を受けることで、生活の質を維持することが可能です。乾いた咳や息切れ、疲れやすさなどの症状が続く場合、早めに受診しましょう。
また、禁煙や健康的な生活習慣を心掛けることで、予防にも繋がります。自分や家族の健康を守るために、専門医のサポートを受けながら治療を続けていくことが大切です。
息苦しさや咳など、呼吸に関するお悩みは、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。