疾患名から探す
最終更新日:2025.3.6百日咳とは?症状や予防法について知っておきたいこと
最近、咳が長引いている…もしかして百日咳かも?と不安になったことはありませんか?百日咳は、風邪と似たような症状で始まることが多いため、見過ごされがちな病気ですが、実は感染力が非常に強く、特に小さな子どもや高齢者にとっては大きなリスクとなることもあります。
咳が長期間続く、または息ができないほどの咳が続く場合は、できるだけ早く受診しましょう。

百日咳とは?
百日咳(ひゃくにちせき)は、百日咳菌(ボルデテラ・パーツシス)という細菌が引き起こす感染症で、特に咳が長期間続くことが特徴です。この病気は、風邪やインフルエンザのように一見、軽い症状で始まることがありますが、放置すると症状が悪化し、非常に長引くことがあります。
約100日(およそ3ヶ月)にわたって咳が続くことがあることから百日咳と呼ばれています。
百日咳は子どもに多い病気として知られていますが、実は大人にも感染する可能性があります。特に、乳幼児や免疫力が低下している人にとっては、重症化することがあるため注意が必要です。
百日咳の症状
百日咳の最も特徴的な症状は、「咳が続く」ことです。最初は軽い風邪のような症状から始まることが多いのですが、時間が経つにつれて強い咳が続くようになります。以下のような症状が見られることが多いです。
- 初期症状(1〜2週間)
最初の1〜2週間は、軽い咳や喉の痛み、鼻水など、風邪のような症状が現れます。この段階では、百日咳と気づかないこともあります。 - 咳の発作(2〜4週間)
次に咳が激しくなり、「百日咳特有の咳発作」が始まります。この咳発作は、1回に何度も連続して咳が出ることが特徴で、特に夜間にひどくなることがあります。咳がひどくなると、息ができなくなり、咳の後に「ヒュー」という音を伴うことがあります(この音は「喘鳴」とも呼ばれます)。 - 回復期(4〜8週間)
咳は長期間続くことがあり、最初の発作が収まっても、数週間から数ヶ月にわたって咳が続くことがあります。
百日咳の感染経路
百日咳は、飛沫感染によって広がります。感染者が咳をすると、その飛沫に含まれる百日咳菌が空気中に放出され、それを吸い込んだ他の人が感染します。百日咳菌は非常に感染力が強いため、特に密閉空間や人が多い場所で感染が広がりやすいです。また、百日咳は「潜伏期間(感染してから症状が出るまで)」が長く、最長で3週間ほどかかることもあります。このため、知らないうちに感染が広がってしまうことが多いです。
百日咳の診断方法
百日咳は、初期の段階では風邪やインフルエンザのような軽い症状から始まり、咳が長期間続くことが特徴的です。そのため、咳が続いている場合に百日咳を疑うのは重要ですが、実際にどのような場合に診断を受けるべきか、またどのような検査が行われるのかを知っておくことが大切です。
どのような場合に診断が必要か?
百日咳の症状が風邪に似ているため、多くの人は最初は気づかないことが多いです。
しかし、以下のような場合には、百日咳の診断を受けることが重要です。
- 咳が2週間以上続いている
普通の風邪やインフルエンザの咳が1週間以内で治まることが多い中で、2週間以上咳が続く場合は百日咳を疑う必要があります。 - 激しい咳発作が続く
特に連続して咳が出る「咳発作」が現れた場合(1回の咳で何度も咳が出る)、百日咳の可能性があります。咳がひどくなると、呼吸が苦しくなり、「ヒュー」という音(喘鳴)が聞こえることがあります。 - 乳幼児や高齢者、免疫が低下している人に症状が現れた場合
特に免疫が弱い乳幼児や高齢者は、百日咳を引き起こすと重症化するリスクが高いため、早期の診断と治療が重要です。 - 他の家族や接触者が百日咳にかかっている場合
同じ家庭や学校で百日咳の患者がいる場合、感染の可能性を考えて診断を受けることが推奨されます。
上記のような症状がある場合には、早期に医師に相談し、百日咳の診断を受けることが勧められます。
百日咳の診断を行う検査
百日咳が疑われる場合、診断を確定するためにいくつかの検査が行われます。百日咳菌は咳や喉から分泌されるため、検査方法も呼吸器に関連したものが中心になります。
以下は、百日咳の診断に使われる主な検査方法です。
1. PCR検査(ポリメラーゼ連鎖反応検査)
PCR検査は、百日咳菌の遺伝子を直接検出する検査です。百日咳が疑われる場合、最も確実な方法として広く用いられています。
- 検査の内容: PCR検査では、咳や喉から分泌される〈喉の拭い液(咽頭スワブ)〉を
採取します。このサンプルから百日咳菌の遺伝子を増幅して検出します。
百日咳菌の存在が確認できれば、百日咳の診断が確定します。
- メリット: 百日咳菌がまだ体内にいる初期段階でも、菌の遺伝子を検出できるため、
症状が出始めてから比較的早い段階で診断が可能です。
- 注意点: PCR検査は、症状が現れてから最初の2〜3週間以内に最も有効です。
この期間を過ぎると、百日咳菌が体内で減少し、検出が難しくなることがあります。
2. 血液検査(抗体検査)
血液検査では、百日咳に対する免疫反応(抗体)の存在を調べる方法です。百日咳菌に感染すると、体内で抗体が作られ、これを血液中で確認することができます。
- 検査の内容: 血液を採取し、**百日咳に対する抗体(IgM、IgG)**の量を測定します。
IgMは感染初期に現れる抗体で、IgGは過去の感染を示す抗体です。症状が発症してから
数週間以上経過してから行うと、IgG抗体が確認されることが多くなります。
- メリット: 百日咳の発症から数週間後でも、感染が確定できるため、
PCR検査では陰性でも、血液検査で過去に感染したことがわかる場合があります。
- 注意点: IgM抗体が現れるのは感染してから数日後から数週間後のため、
症状が出てすぐに抗体検査をしても陰性になることがあります。
そのため、症状が長引いてから検査を受けるのが一般的です。
3. 喉の分泌物検査(培養検査)
百日咳菌を直接検出するために、喉からの分泌物を採取して培養する方法です。
- 検査の内容: 喉から分泌物を採取し、試験管内で百日咳菌を増やして、
菌が存在するかどうかを確認します。培養に数日かかることが多く、
結果が得られるまで時間がかかることがあります。
- メリット: 百日咳菌を直接確認する方法として非常に信頼性が高いです。
- 注意点: PCR検査よりも時間がかかるため、早期診断には向いていません。
また、喉の分泌物が十分に採取できない場合もあります。
百日咳の治療法
百日咳は抗生物質による治療が有効ですが、咳が始まったばかりの初期段階での治療が最も効果的です。治療が遅れると、症状の改善が遅くなることがあります。主な治療方法は以下の通りです。
- 抗生物質
百日咳菌を殺すために、抗生物質(エリスロマイシンやアジスロマイシンなど)が処方されます。早期に治療を始めることで、症状の悪化を防ぎ、感染を他の人に広げるのを防ぎます。 - 咳止め薬
百日咳の症状を和らげるために、咳止め薬が使用されることもありますが、薬だけで咳が完全に治るわけではありません。 - 酸素療法や入院
特に重症化した場合、呼吸が難しくなることがあるため、酸素療法や入院治療が必要な場合があります。
百日咳の予防法
百日咳は予防が非常に重要です。特に小さな子どもや免疫力が低下している人々を守るために、
予防接種が推奨されています。
- 手洗いやマスクの着用
百日咳の感染拡大を防ぐために、感染者は咳をするときにマスクを着ける、手洗いをこまめに行うことが重要です。特に、赤ちゃんや高齢者など免疫力が弱い人と接する場合には、予防策を徹底しましょう。 - 免疫力を高める生活習慣
健康な食事や十分な睡眠、運動など、免疫力を高める生活習慣を心がけることで、感染を予防することができます。
まとめ
百日咳は、風邪と似た症状から始まり、長引く咳が特徴的な感染症です。特に乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人々にとっては、非常に危険な病気となることがあります。しかし、早期に診断され、適切な治療を受けることで回復することができます。また、予防接種を受けることで、百日咳の発症や感染拡大を防ぐことができます。
もしもご自身やご家族が百日咳の症状を感じた場合は、早めに医師に相談することをお勧めします。
予防と早期治療が、百日咳から身を守る鍵となります。