在宅酸素療法(HOT)でQOL向上!COPD・慢性呼吸不全の患者様へ - 大阪心斎橋呼吸器内科・内科クリニック

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最終更新日:2025.2.21

在宅酸素療法(HOT)でQOL向上!COPD・慢性呼吸不全の患者様へ

在宅酸素療法(HOT)とは

在宅酸素療法(HOT)とは、慢性呼吸不全や酸素不足に悩む患者が自宅で酸素吸入を行う治療法です。この療法では、酸素供給装置を用いて高濃度の酸素を鼻に挿入したカニューラやマスクを通じて吸入します。酸素は生命維持に欠かせないエネルギー代謝に深く関わるため、体内の酸素不足を補うことで健康を維持しやすくなります。英語の「Home Oxygen Therapy」の頭文字を取って「HOT」とも呼ばれています。

在宅酸素療法(HOT)対象となる疾患と条件

在宅酸素療法(HOT)が適用される疾患には、高度慢性呼吸不全、肺高血圧症、慢性心不全、チアノーゼ型先天性心疾患などが含まれます。また、これらは単一の病名ではなく、症状や病態を指しますので、以下の適応基準の条件に合致する患者様が対象になります。

在宅酸素療法(HOT)適応基準の条件

  • 動脈血酸素分圧(PaO2)が55mmHg以下の患者
  • PaO2が60mmHg以下で、睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症をきたす患者
  • 医師が在宅酸素療法を必要であると認めた患者

診断には、血液中の酸素濃度を測定する血液ガス分析や、パルスオキシメーターを使用します。呼吸機能検査(スパイロメトリー)や胸部レントゲン検査も合わせて行われることがあり、慢性呼吸不全の正確な状態を把握して治療方針を決定します。

よく在宅酸素療法が必要になる肺の病気

  • 肺気腫(COPD)
  • 間質性肺炎
  • 肺結核後遺症
  • 肺がん
  • じん肺

在宅酸素療法(HOT)が必要になる原因となる基礎疾患としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が最も多くなっています。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、タバコの煙などの有害物質を長期に吸入することで肺が炎症を起こし、呼吸がしにくくなる病気です。従来は慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていましたが、現在はこれらの病気の総称として知られています。タバコを吸っておられる方は注意するようにして、特に以下のような症状が出始めている場合は早めに受診するようにしましょう。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主な症状

  • 慢性の咳や痰
  • 歩行時や階段昇降など、身体を動かしたときに息切れを感じる労作時呼吸困難
  • 喘鳴や発作性呼吸困難などぜんそくの様な症状

在宅酸素療法期待できる効果:症状緩和QOL向上

在宅酸素療法(HOT)には、息切れの改善や運動能力の向上、心臓への負担軽減など様々な効果が期待されています。これにより患者自身が活動できる範囲が広がり、日常生活の質(QOL)が大きく向上します。また、酸素補給による記憶力や注意力の改善、入院回数の減少も観測されており、長期的には生きがいのある生活の実現にも寄与します。多くの患者が、HOTの導入によって健康の維持と共に生活の充実を感じています。

  • 息切れが軽減し、歩行距離や活動範囲が広がる
  • 睡眠中の酸素不足が改善され、睡眠の質が良くなる
  • 肺や心臓への負担が減り、心不全への進行を防ぐ
  • 低酸素による頭痛、イライラ、注意力低下、記憶力低下などの症状が改善される
  • 脳への酸素供給量が増え、集中力・記憶力・注意力が改善する
  • 入院回数が減り、入院費などの経済的負担が少くなる
  • 趣味や社会活動の継続、旅行の実現など日々の生活を大幅に改善・向上できる

在宅酸素療法で使用される酸素供給装置

在宅酸素療法(HOT)で使用される酸素供給装置には、酸素濃縮器や液化酸素容器などがあります。酸素濃縮器は、空気中から酸素を濃縮し供給する装置で、自宅での長時間使用に適しています。一方、酸素ボンベは持ち運びが可能なタイプで、外出時に便利です。

酸素は、鼻に装着するカニューラを通じて供給されます。医師が指示する酸素流量を守ることが重要で、流量を自己判断で変えると効果が下がったり危険を伴う場合があります。

酸素供給装置使用時の注意点

在宅酸素療法(HOT)を安全に行うためには、住環境の整備が欠かせません。まず、酸素供給装置を設置する場所には、換気が良くて火気が近くにない場所を選ぶ必要があります。

酸素は燃焼を助けるため、特に高濃度酸素を吸入しているときに火のそばにいると火災の危険性が高まりますので注意が必要です。

加えて、喫煙は厳禁です。不注意でタバコの火が酸素供給装置やチューブ付近に近づくと大事故につながる可能性があります。また、日常的に機器の点検を行い、動作や酸素供給が正常であるか確認することが大切です。これらを徹底することで、安全性の高い在宅酸素療法の利用が可能となります。

在宅酸素療法と日常生活の両立のコツ

在宅酸素療法(HOT)を導入すると、自宅で酸素を吸入しながら生活することになります。酸素供給装置を正しく取り扱い、機器の動作状況を定期的に確認することが重要です。さらに、息切れや慢性呼吸不全の症状が出た際には、無理をせず休息をとり、自宅環境を整備して負荷を軽減する工夫が必要です。

外出時には携帯用酸素機器活用

在宅酸素療法(HOT)を利用している患者が外出する場合、携帯用酸素ボンベや酸素濃縮器を活用することで活動の範囲を広げることができます。これらの機器は軽量化が進んでおり、持ち運びがしやすいものも増えています。

外出前には、事前に酸素の残量を確認してから家を出るようにしましょう。また、目的地での酸素供給が必要な場合は、訪問先への事前連絡や必要な備品の準備も忘れないようにしてください。外出中に息切れを感じたら、無理せず休むことが大切です。

仕事や趣味を楽しむための工夫

在宅酸素療法(HOT)を導入していても、適切なサポート体制があれば仕事や趣味を楽しむことが可能です。例えば、仕事場では酸素供給装置を使いやすい位置に設置し、周囲のスタッフと療法に関する簡単な情報を共有しておくと安心です。趣味に関しては、自宅で運動が可能な範囲での軽い活動や、読書や手工芸など酸素供給を妨げない範囲の楽しみを取り入れることで、充実感が得られます。また、無理に活動を増やすのではなく、体調に合わせたペースで取り組むことが大切です。

家族や介護者のサポートを得る方法

在宅酸素療法をスムーズに行うためには、家族や介護者の協力が欠かせません。まず、家族や介護者がHOTの基本知識を学び、酸素供給装置の使用方法や火気を避ける対策を理解することが重要です。また、日常生活の中で体調が悪化した際や、緊急時の対応について事前に話し合っておくと安心です。さらに、必要に応じて訪問看護や地域の医療サービスを活用し、専門家のサポートを受けることで家族の負担を軽減できます。患者と家族全員が協力し、共に過ごす時間を楽しむことが療法を続ける上でのポイントとなります。

安全に使用するために

在宅酸素療法(HOT)では、高濃度の酸素を吸入するため、火気の取り扱いには細心の注意が必要です。酸素は燃焼を助長する性質があるため、患者が酸素吸入中に火気を近づけると重大な事故が起こる可能性があります。

酸素吸入を行う部屋では、周囲2メートル以内に火気を置かないことが基本的なルールです。また、喫煙や香燻の使用も厳禁です。酸素療法を安全に続けるためには、このルールを徹底することが重要です。

喫煙と酸素療法の危険性

喫煙は在宅酸素療法を行う患者にとって非常に危険な行為です。喫煙時に発生する火花や灰が酸素に触れると、瞬時に激しい燃焼が発生する可能性があります。また、喫煙は肺に追加の負担をかけ、呼吸状態をさらに悪化させる要因となります。酸素療法は慢性呼吸不全を抱える患者の呼吸を助ける重要な治療法であり、この治療効果を最大限に引き出すためにも、患者自身や周囲の家族は禁煙を徹底することが必要です。

まとめ

在宅酸素療法を効果的に活用するためには、医師との密なコミュニケーションが欠かせません。患者の状態や生活環境に応じた酸素供給量の調整や、機器の適切な選択は医師の指導をもとに行われます。

また、治療中に何らかの異常を感じた場合には、早めに医師へ相談することが重要です。定期的な診察を通じて、治療計画を見直しながら、息切れや慢性呼吸不全の症状を最小限に抑え、持続可能で質の高い治療を続けることが可能になります。

大阪心斎橋呼吸器内科・内科クリニックでは、日本呼吸器学会呼吸器専門医である女性院長が、丁寧に問診・診察を行っております。

在宅酸素療法(HOT)の適応かどうか、問診・検査を行った上で治療を行っていきますのでご相談ください。

在宅酸素療法は、患者の生活に新たな可能性を生み出します。慢性的な呼吸の不調から解放されたことで日常生活が広がり、家族や友人との交流、趣味や仕事への意欲を取り戻す方が多くいます。

例えば、以前は外出を諦めていた患者が携帯用酸素ボンベを使用することで旅行や買い物を楽しむようになったり、療法の効果を実感しながら自宅で積極的に料理や運動を始めたりと、それぞれの人生が彩り豊かになっています。

在宅酸素療法(HOT)を活用することで、「呼吸が楽になる」というシンプルな目標が具体的な幸せや充実感へとつながります。医療の力を借りながら、より明るい未来を手に入れましょう。

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